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2021年7月6日

誰もが安心して旅立てる社会作り

下記は「あとがき」です。
もしご興味ありましたら、千葉研修室にて本を販売しておりますので、ぜひお声がけください。アマゾンでも販売しています。

誰もが安心して旅立てる社会作り

新田 崇信

思い返せば、日本看取り士会の新宿研修所にて、所長の中屋敷妙子さんから「看取り学初級」を学ばせていただいたのが「看取り士」の世界との出会いでした。そこでは、柴田さんの経験や今までの活動、そして培われてきた死生観ともいえる「看取りの心」を丁寧に教えていただきました。
「看取りは日本の古来からある文化の一つ」という言葉に深い感動を覚え、中級講座、上級講座へと学びを深めていくことになりました。特に、「看取りを取り巻く環境」の変化を、3つの時間軸(過去・現在・未来)に分けて整理していただいたことによって、仏教やお寺と比べながら学びを深めていくことができ、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。

そんな折に、柴田会長から本書のお話をいただき、自身の学びを深めたいとの思いもあってありがたく受けさせていただくことにしました。私で務まるものだろうかと不安を感じながら鼎談に参加させていただきましたが、初対面にもかかわらず、とてもあたたかく和やかな雰囲気で話が進み、最初に感じていた不安はいつの間にか消え去っていました。

柴田さんの声のトーンは、まさに「やさしく」といった雰囲気があります。看取り学での大切なキーワード「やさしく やさしく やさしく」を体感したようなひとときでした。
また鈴木さんは、日本の伝統文化を愛し、神道だけではなく、仏教にも造詣の深い方で、お話をじっくり聞かれる姿や発言される言葉から、教養の深さと大きな優しさを感じました。
「人」が場の空気や雰囲気を作っていくというふうによく言われますが、お二人のおかげで優しい雰囲気に包まれ、心地よい空気を感じる鼎談となりました。

話は変わりますが、社会を見渡してみると、長寿化やライフスタイルの変化に伴って家族のあり方の多様化がどんどん進んでいます。そしてその結果として、ある調べによると、2025年には単身者世帯が1996万世帯にまで増加するとの予測がされています。

まさに「無縁社会」ともいえる社会状況になりつつある現在、僧侶として法事や葬儀にお参りに伺うと、参列者が誰もおられないことがあります。
身寄りがおられず単身で亡くなられたお葬式ということもあれば、連れ合いが入院中で参列できないということもあります。また、そこまではいかなくとも、参列者がお一人だけという葬儀や法事も少なくないというのが実際のところなのです。

単身者世帯では日々の会話量が極端に少なくなるために、認知や病気が加速するといった懸念もあるといいます。このようなお話をすると、これまでは「えっ?」といった驚きの声が多かったのですが、最近では「他人事ではない」という声の方が多くなってきました。

そんな今、お互いに認め合い支え合う共生社会の実現を目指し、血縁だけではなく、個人と個人が知縁として繋がり、本当の意味での「結縁(けつえん)」という関係を広げていくことがとても大切になります。
そして、家族の有無に関わらず、誰もが幸せに暮らし、安心して旅立てる社会を作っていくことが、どうしても必要だと思うのです。

「死」を学ぶことを通して「生」を学ぶ。
本書をきっかけに、誰もが安心して旅立てる社会作りの活動をより進めていきたいと思っております。